給排水衛生設備




1.給水設備

(1)受水槽

 我国の水道は、小規模な2階建迄の建物への直結給水を想定して整備が進められてきたため、配水管の

最小動圧も1.5kgf/cu程度とかなり低い水圧で推移してきた。昭和30年代の本格的成長時代に入り、3階建

てを超える中高層建物や多量に水を使用する施設が出現すると、水圧も水量も不足し、付近の配水圧に影響

を与えないよう受水槽を設けて給水する方法を取った。

 昭和32年水道法が制定され、その中で給水装置が法的に定義され、また、施行令で給水装置(水道引き

込み管)とポンプの直結を制限されたことにより、ビルの給水方式の基本として受水槽方式が定着する。また

、受水槽以降の設備は、水道行政から切り離され、建物側の給水設備と水道側の給水装置(引き込み管)と

して、分ける形をとり今日に至っている。

 受水槽は一般に地下最下階の床下二重スラブの空間を利用することが行われたため、その構造から衛生

上の問題があった。

 昭和40年代に入ると、床下受水槽の衛生上の問題が指摘され社会問題化する。スラブのクラックからの汚

水の侵入、建設廃材の残留、清掃の不実施、などである。建設省はこれを受け、昭和50年の法令によって

給水タンク等の床上設置などを義務付けた。これにより受水槽の衛生面の確保が大きく改善されることになる

 一方、厚生省は昭和45年「ビル管理法」により特定建築物の受水槽等の管理を義務付けたが、さらに、

対象外の受水槽の清掃の不備や、衛生上の観点から、昭和52年水道法を改正し20m3を超える受水槽以

降の給水系統の維持管理を簡易専用水道として規制し、さらに、61年からは、10m3超まで規制の範囲を

改め、現在に至っている。

(2)給水方式

 1)高置水槽方式
 ビル用給水方式として、我国では、最も一般的な方式である。

 当初、水槽は鋼板製内部亜鉛溶射、または、エポキシ樹脂コーティング仕上げなどが多かったが、昭和30

年代になるとFRP製水槽が登場し、鋼板製に替わり急速に普及していく。また、昭和50年 、法令により、従来

の地下受水槽に替わりFRP製パネル水槽が、この分野の主流になった。

 現在、FRP製のほかに鉄パネル、ステンレスパネル等の製品がある。

 阪神大震災においても、高置水槽及びその周辺に大きな被害が集中して発生しており、水槽の強度、設置

法などについて、基本的な見直しが必要と思われる。

 2)圧力水槽方式
 この方式は、主として高置水槽が設置しにくい地下街、体育施設或いは広大な敷地に点在する工場等の給

水に採用される。昭和30年代に自動空気補給装置が開発され普及していく。、現在この方式は、給水圧力に

変動がでたり水槽の容量が大きくなることから、中小規模建物の給水や、部分的な補助システムとして採用さ

れる例が多い。

 3)ポンプ直送方式
 受水槽の水を給水ポンプにより建物内の必要箇所に直接送る方式で、定速ポンプによる台数制御と、ポン

プの回転数を変化させてポンプの容量を制御するポンプ容量制御方式がある。一般に圧力検知方式が採用

されるが、吐出し圧力一定制御及び末端圧力推定制御がある。

 ポンプ直送方式は、、50年代に定着し、最近はインバータを採用したコンパクトなユニットが開発され、集合

住宅を中心に屋上水槽方式に替わる給水方式になりつつある。

(3)ゾーニング

 給水圧力の上限は、ホテルや住宅では2〜3kgf/cu事務所や工場では3〜5kgf/cuが標準とされ、超高

層建物の給水・給湯系統の適正圧を確保するための、減圧弁や中間水槽によるゾーニング技術が、40年代

確立し、実施された。

(4)配管材料

 昭和30年前半頃までは、亜鉛めっき鋼管が、ほぼ万能の管材として広く使用されてきたが、その後、水質

の悪化に伴い、腐食による赤水、錆こぶによる管閉塞、漏水などのトラブルが続出し給水管として不適当な材

料となり、使用されなくなってきた。この様な状況に対処するため、各種の耐食性管材や継手の開発が進め

られ、現在、屋内配管用としては、次のような材料が主として採用されている。

 ライニング鋼管は、赤錆対策のエースとして亜鉛めっき鋼管に替わって登場し、昭和35年頃、赤水問題が

多発していた関西地区の公団住宅から試用が開始され、徐々に普及していった。

 昭和52年建設省仕様に記載されたことを契機に需要が本格化した

。現在、水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管、水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管のほか、最近は給

湯用として、耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管も採用されるに至っている。

 ライニング鋼管用継手の無かった時代を経て、樹脂コーティング継手が採用された後でも、管端部の処理

に弱点があり、管端部の隙間腐食や青銅バルブとの異種金属接続によるマクロセル腐食がトラブルとなり問

題化した。

 最近、管端防食継手が各メーカーにより開発され、管端部・ねじ部とも水に接しないコア入り機構が採用され

るようになり、上述のような腐食トラブルは解消される方向に進んでいるが、ねじの加工精度や、ねじ込みトル

ク等の施工管理が重要であり、これを怠ると、また新たな腐食トラブルを引き起こす恐れがある。


2.排水通気設備

(1)排水通気方式

 昭和30年代には、排水通気方式は現在とほぼ同様なシステムを確立している。昭和33年下水道法が制

され、建物からの排水の種類と排出方法が明確にされた。当時、下水の処理区域外も多く、その場合は、

建物内の排水を汚水と雑排水の2系統に分けて配管し、汚水は浄化槽で処理して排出した。

 通気方式は、集合住宅では伸頂通気、事務所ビル等ではループ通気、ホテル等では各個通気を主に採用

したが、まだ和風大便器が多く設置していることも原因となり、「床下通気」になっているケースが多かった。

(2)超高層建物の排水立て管

 昭和30年代の中頃には終局流速について研究調査が進められ、排水の落下速度に限界があることが知

られており、40年代の超高層建設に支障無く対応できた。

(3)配管材料

 従来、排水管の材料としては、汚水管は鉛管と排水鋳鉄管、雑排水管として亜鉛めっき鋼管とドレネージ継

手の組み合わせが主流であったが、近年、建物の高層化、熟練工の不足などから可撓性、軽量性、簡易施

工性が求められ、次のような材料が主に採用されている。

 排水用タールエポキシ塗装鋼管は、昭和50年代の中頃より、排水鋳鉄管の省力化代替品として、排水鋼

管用可撓継手と共に採用されるようになり、最近では、更に汚水用配管材料の軽量化が進み、薄肉鋼管に塩

ビライニングを施した、排水用塩化ビニルライニング鋼管が多用されている。

3.排水再利用設備

(1)排水再利用設備

 排水再利用設備は、建物内で一旦使用された水―排水を適切に処理し、その処理水を、便所の洗浄水等

に使用するものであり、その利用方式は規模により個別循環式、地域循環式、広域循環式の3方式に分類さ

れる。

 排水再利用設備は、昭和40年代中頃より採用が始められ、昭和50年代中頃より、国の排水再利用に関

する施策や、地方自治体による指導により急激に増加している。

 排水の再利用は、水道水の使用量を削減することにより、水不足地域の需給ギャップを直接緩和すること

と、建物からの排水量を減少させることにより下水道の負荷を軽減させる効果がある。

 排水再利用のための建設費、処理費が高く建物側の大きな負担になること、技術的に上質な処理水を得ら

れても実際上、便所の洗浄水以外には使用出来ないなどのネックがあり、特定地域の大規模建物以外にあま

り普及していない。

 しかし、最近、全国的に渇水が日常化しており、雨水利用との併用なども含め、もっと強力に推進していく必

要がある。

(2)雨水利用設備

 都市部における雨水利用は、水の有効利用のほか、都市小河川での洪水対策、合流下水道への負荷軽減

など都市施設的な意義がある。

 雨水利用の実施例は、昭和40年代中頃からあるが、昭和60年代に入り、教育施設や地区センターなど比

較的小規模な公共建物で多く採用されるようになり、現在、全国で約500施設が稼働している。民間の大規

模施設としては昭和60年竣工の両国国技館、昭和63年竣工の東京ドーム、平成5年竣工の福岡ドーム等がある。
 雨水は、排水再利用水に比し、水質が良好なため処理が簡単であり、用途も広く便所洗浄水のほかに、プ

ール等の補給水、撒水、清掃水、消防用水などに利用されている。

 また、最近、災害時の非常用飲料水の原水としても関心を集めている。

 

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